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救急診療科
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ワンちゃん・ネコちゃんの急な体調不良やケガなど、救急の際は迷わずお電話を。ピア動物医療センターでは、救急対応も行っております。救急・集中治療の経験豊富な獣医師が担当いたしますのでご安心ください。
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嘔吐をした
犬の嘔吐は、ちょっとした食べ過ぎやストレスから、命に関わる病気まで、原因はさまざまです。
以下のような場合は、すぐに動物病院を受診してください。
早めの受診をすすめる場合
- 嘔吐を繰り返している
- ぐったりしていて元気がない
- 食べ物や水をあげてもすぐに吐く
- 血が混じった嘔吐がある
- 嘔吐に加えて下痢や軟便がある
- 異物誤飲(薬物、おもちゃ・布・骨など)の心当たりがある
- 子犬・シニア犬・持病のある犬が嘔吐している
緊急性が低い場合
- 食前に液体のみを嘔吐。食欲はある(空腹時嘔吐)→ただし続く場合は受診をお勧めします
- ごはんを急いで食べた後、急に吐いた。(少量ずつあげる)
- 猫の毛玉
嘔吐だけなのか?他の症状を伴っているかで検査・治療の提案は変わってきます。来院時には家でのご様子を詳しく教えてください。
軟便・下痢
犬猫では下痢はよくある症状の一つです。便が緩いといっても程度はさまざまで、完全な水下痢、形のない軟便、つかめる程度の軟便などに分けられます。
急性の下痢の場合はその多くが一時的で2−3日で改善するのですが、すぐに病院に行った方がいいのか、そのまま様子を見ていいのか判断は難しいですよね。簡単な判断の基準は以下のとおりです。
早めの受診をすすめる場合
- 下痢に加えて嘔吐も見られる。
- 食欲が落ちている。
- 下痢の量が多く、水分摂取が不十分。
- 便の色が真っ黒
緊急性が低い場合
- 何回も排便姿勢をとるがちょっとずつしか出ない。(しぶり便)
- 食欲元気がいつも通り。
- ゼリー状のものが便の周りに付いており、出血はあってもごくわずか。
「数日で下痢は治りますよ」といっても下痢が続くのは可哀想だし、家の中も大変なことになりますよね。病院で処方する乳酸菌製剤(ビオイムバスター)や下痢止め薬(ディアバスター)は急性下痢の日数を短縮してくれるとの結果が出ているので(二日くらい早く治る)使用しています。
下痢が続いて脱水状態になると元気・食欲低下の悪循環へ入ってしまいます。そのため身体検査で脱水が見られた場合は皮下輸液を行い、回復をサポートします。
異物を食べてしまった
食べても問題がないものから、少量でも中毒症状を起こすものまでさまざまです。
食べ物、薬物、植物などで中毒の可能性がある場合は、催吐処置や活性炭などで体外への排泄を促します。
消化できないもの、物理的な閉塞を起こすものは摘出を試みます。
催吐処置
注射薬を使用して吐き気を誘発します。当院ではトラネキサム酸という本来は止血剤として使用する薬剤を静脈注射しています。多くの患者さんで適応となりますが、食道を傷つける可能性が高い異物の場合は別の方法を選択します。
内視鏡下異物摘出
催吐処置が不適応、または催吐処置が無効であった場合は内視鏡により胃内の異物を摘出します。食渣が残っている場合は視野が限定されるため見落とす恐れがあります。胃切開の方が適していると判断した場合は手術に切り替えることもあります。
開腹による胃腸切開・吻合手術
異物が胃内にとどまっている場合は、胃切開手術が適応になります。すでに小腸へ流れて閉塞している場合は腸切開を行います。誤食してからの経過が長く、腸穿孔・壊死をしている場合は当該箇所を切除し、正常な腸同士を吻合する必要があります。
活性炭
チョコレート、薬物や毒物などを摂取した場合はなるべく早めに投与することが推奨されています。活性炭には消化管内の化学物質を吸着する作用、さらにすでに血中に吸収されている薬物の排泄促進効果もあります。
ちなみに解毒治療として胃洗浄がかつては行われていましたが、服毒後60分で行なった場合の洗浄率は10%程度であり臨床的な有用性は議論の余地があります。
呼吸が荒い・苦しそうにしている
呼吸が早くなる理由は多くあります。もともと心臓病がある子であれば、心不全が進行し胸部に水が溜まっている可能性を考えます。
上気道(鼻、喉、気管)や下部気道(気管支・肺)に根本的な原因がある可能性もあります。またこれ以外に多いのが「呼吸困難にみえる疾患」です。この”みえる”というのは呼吸器には異常がないということを意味します。
安静時の呼吸回数が非常に参考になりますので、一分間に何回くらい呼吸しているのか数えてみてください。一秒間に一回(60回/分)呼吸している状態は明らかに異常です。
そして腹式呼吸(呼吸時に明らかにお腹が動いている)は腹部まで動かして横隔膜を広げて呼吸を楽にしようという反応ですのでかなり深刻な状態と言えます。すぐに受診しましょう。以下に比較的多い病気を簡単に挙げています。
心疾患
小型犬に多い心疾患は僧帽弁閉鎖不全症という心臓の部屋を分ける弁が機能しなくなり、逆流を起こす疾患です。(詳しくはこちらをご覧ください。)結果的に逃げ場がなくなった血液が肺にあふれ出してしまうことで肺のガス交換機能が低下します。肺の内部に水があふれることを肺水腫、肺の外に水がたまることを胸水といいます。改善するには内科治療(強心剤、利尿薬、酸素室管理)が必要です。
呼吸器疾患
気管虚脱、喘息などの気管・気管支疾患、鼻~喉に閉塞性の異常がある上気道閉塞(短頭種に多い)、肺が硬くなる間質性肺疾患などさまざまな疾患があります。とくに閉塞性疾患は短時間で命に関わる状態まで悪化する危険性があります。
呼吸困難に”みえる”疾患
人間がストレスを感じると呼吸に変化が出るように、動物も脳になんらかの影響があると呼吸が変化します。
たとえば痛みストレス(腹痛、神経痛)があると一般的に呼吸数は増加します。
そのほか発熱・高体温状態を改善させるため換気を増やそうとする反応もあります。
ただしこの呼吸困難にみえる状態はなかなか一般の方には判断がつきませんので、獣医師の判断が出るまでは呼吸器に何か異常が出ているとみなしておいたほうがよいでしょう。
急に動けなくなった、足をつかない(意識状態は正常)
このような症状を起こすきっかけは以下のようなものが多く、神経的または整形外科的な疾患が疑われます。
- 階段から降りるときにジャンプしてから足を挙上する。
- 抱っこしている際に落下した
- ドッグランで走った後から足を挙上する
- 遊んでいる最中にキャンと痛がってから震え、動けない
神経疾患
神経疾患は思い当たる出来事がなくても症状が急に見られることが多いです。
椎間板ヘルニアは頸部・胸腰部に発生することが多く、痛み→不全麻痺(一応動く)→麻痺→痛覚消失と悪化していきます。脊髄への圧迫が重度の場合は一気に痛覚消失へ至り、診断・治療が遅れるとその後の運動機能の回復率が低下します。
そのほか脳脊髄疾患がもともと潜んでいて、目が見えていなくて落下、足先感覚低下から段を踏み外してしまったなどの怪我につながることがあります。
整形外科疾患
骨折、脱臼、捻挫、靭帯損傷など様々な疾患があります。
完全に足がつけない(体重をかけられない)のか、少し足を気にする程度なのか。完全に挙げてしまっているようなら骨折や脱臼の可能性をまず考えます。軽い捻挫であれば安静にしていれば自然に回復することも多いです。
診断には整形外科学的検査(触診)やX線検査を行います。
整形外科疾患に類似する症状を出すものとして、爪折れ、肉球にとげが刺さったなどのケガもあります
立てなくなった(意識状態が異常、パニック)
突然立てなくなった、ふらつく、倒れて起き上がれないといった症状は、命に関わる緊急性の高い疾患が隠れている可能性があります。以下のような病気がよく見られます。上の「急に動けなくなった」とも似ているのですがこちらは脳に影響するより重篤な疾患を挙げています。
犬の老齢性特発性前庭障害
高齢の犬に多く、突然のふらつき、頭の傾き、眼振(目が揺れる)などの症状が出ます。ひどいとローリングといってぐるぐる転がってしまいます。見た目は重症に見えますが、適切な対処で回復するケースが多いです。
脳梗塞・脳腫瘍
脳の障害によって意識の低下や運動機能の麻痺が起こり、急に立てなくなることがあります。画像検査(MRI・CT)により診断が可能です。
ショック(出血・心臓病・アレルギー反応など)
血圧が極端に下がり、ぐったりして立てなくなる状態です。原因により緊急処置が異なりますが、即時の対応が命を救う鍵になります。
低血糖
発作にも分類されますが低血糖も立てなくなる原因となります。糖尿病治療中、肝臓病、栄養不良、腫瘍などが原因で見られます。
尿が出ない
おしっこを出そうとする姿勢にはなるがポタポタとしか出ない。この場合には膀胱か尿道に問題があります。よくある病気は以下のとおりです。
膀胱炎
犬でも猫でも膀胱炎はよく見られる病気であり、膀胱の炎症によりおしっこを溜めづらくなっていたり、膀胱の違和感からおしっこを出したくなります。細菌が尿路に入ってしまって感染が成立しますが、基礎疾患(糖尿病やクッシング症候群、免疫抑制治療)があるとより起こりやすくなります。細菌性膀胱炎はオスよりもメスで起こりやすいとされています。
尿路結石
特に犬も猫もオスの場合に緊急性があります。尿道が結石などで詰まっていることで膀胱がパンパンになり、さらにその上位の腎臓で尿が作られなくなってしまう急性腎障害が起きている可能性があります。次のような症状がある場合は腎障害の可能性があります。
- 丸一日以上排尿していない
- 食欲が低下している
- 元気がなくなくボーッとしている。あまり動こうとしない
- 嘔吐している
実際に排尿できているのか、それは実際に病院で膀胱を触診してもらうことですぐにわかります。判断は難しいのですが、ざっくりいうとオスは尿道が狭いので尿道閉塞リスクは高いのに対し、メスであれば尿道結石で排尿困難になることは稀です。腎障害を放っておくと命にかかわりますので特に「オス猫、肥満、尿が出ていなそう」の3つが当てはまればすぐの受診をお勧めします。
便が出ない
「何日かうんちが出ていない」「トイレに何度も行くけど、出ていないようだ」
特に2日以上排便がなく、元気がない・吐く・お腹を触ると嫌がるといった症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。便が出ていない場合は、大きく以下のように分けられます。
- 出ているけどしぶり便になっている(下痢)
- 肛門付近が痛くていきみきれない
- そもそも便が溜まっていない
- 便が大きく、固くなってしまい出せていない(便秘)
出ているけどしぶり便になっている(下痢)
排便を何度もしたい感覚になるが出すものは残っていない。粘液だけ出る。このような場合はしぶり便といい下痢の時によく見られます。
肛門付近が痛くていきみきれない
肛門周りの感染や炎症、粘膜の腫れなどにより便はたまっているのに出しきれないことがあります(ヒトの痔を想像してみてください)
そもそも便が溜まっていない
しばらく食事を取れていなかった場合には便の量が少なくなります。それはそれで食欲不振の原因を調べたほうが良いでしょう。
便が大きく、固くなってしまい出せていない(便秘)
特に猫ちゃんで多いのですが、食物繊維が少ない食事がメインの場合は便がうまく流れていかないことがあります。そのほか神経疾患(椎間板ヘルニアなど)や骨盤が狭くなっている(過去の骨折)場合には結腸に便が滞留しやすくなります。
診察の参考になりますので、以下の点をメモしていただけると助かります。
- 最後に排便したのはいつか
- 食欲・水分摂取量・嘔吐の有無
- 排便時にいきんでいる様子があるか
- お腹・お尻を気にするような仕草があるか