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循環器科
ピア動物医療センターの循環器科では、「悪化する前に対処する」ことを最も大切にしています。
心臓の病気は、見た目には元気そうに見えても、実はゆっくりと進行していることが多くあります。
そのため当院では、早期発見・早期介入を目指して、心エコー検査やX線検査などの画像診断を積極的に行い、リスクが高いと判断された場合には、先制的な治療や生活管理の提案を行っています。
先制的な治療とは
例えば犬の循環器疾患で最も多い病気の一つである僧帽弁閉鎖不全症は進行程度によってA, B1, B2, C, Dと分類されています。「Cの段階になったら(いわゆる肺水腫)利尿薬を開始しましょう」と一般的な先生はお話しすると思います。しかし私が飼い主であれば、「いやいや、肺水腫なんて可哀想な状態にならない様にしてほしい」と思います。
救急医療で働いていた経験からお話ししますと、明らかに心雑音があるのにずっと検査をせずに様子を見ていた結果、心不全・肺水腫となって駆け込んでくる子が非常に多いのです。生死の境をさまよった患者を何回も経験しましたが、その多くは適切な検査・治療を受けていれば避けられたはずでした。
当院の循環器科の定期検診では、心臓をエコー検査・X線検査で評価し明らかに進行していて次のステージに入りかけているのであれば治療強化を検討します。進行した患者さんの心エコー検査頻度としては、安定していれば2-3ヶ月に一回、治療開始直後であれば週単位でチェックします。
その薬は本当に必要?
そして不必要な薬はなるべく切っていきます。
というのは、以前はある薬が一定の有効性があるとされていたものが、新たな大規模研究によって効果が疑問視されるのはよくあることです。もちろん同時に新しい有効な薬も生まれています。
獣医療の世界ではヒトの医療のように条件の揃った質の高い研究を行うのが難しいので、ヒトの医療を参考にしたり生理学的・薬理学的に有効と思われる薬剤を使用することもありますが、当院ではエビデンスのない治療は行いません。少なくとも海外の専門医が行なっている治療に沿ってご提案します。
また心臓病だと内服薬の種類が多くなる傾向にありますが、猫ちゃんの場合なかなか投薬ができないこともあろうかと思います。「この薬を飲ませないとどんどん悪化してしまうよ」と言われて不安に駆られ、無理に飲ませて猫ちゃんとの良好な関係が崩れてしまったら残念です(結構あります)。この場合は優先順位を決めて、飲んでくれたらラッキーくらいに思った方がお互いのためです。治療は飼い主様とペットが幸せに暮らすための一つの手段ではありますが、絶対に優先されるべきものというわけではありません。
よくみられる循環器疾患と対応例
以下のような疾患に対して、診断・治療・モニタリングを行っています。
- 僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流)
⇒ 小型犬に多く、進行性の心臓弁膜症です。内科管理を中心に定期的な心エコーで進行をチェックします。 - 肺高血圧症
⇒ 咳や呼吸の異常、失神などの症状が現れることがあります。原因の特定と適切な内科治療が重要です。 - 猫の肥大型心筋症/拘束型心筋症
⇒ 心不全がかなり進行しないと症状は出ないので無症状のうちに発見することが大切です。早期に治療を始めることで、血栓などの合併症を予防します。 - 先天性心奇形(動脈管開存症、心室中隔欠損など)
⇒ 若齢時に発見されることが多く、外科的治療が必要な場合もあります。 - etc(心臓病はたくさんあります)
「なんとなく元気がない」そんな時こそご相談を
心臓病は、元気がない・咳が増えた・散歩に行きたがらないなど、さりげないサインから始まることがあります。
症状が出てからではなく、出る前に気づくことが、治療の明暗を分けることもあります。
定期的に健康診断を受けることで心雑音、不整脈などを発見することができます。
他の病院さんで心雑音を指摘されたけど検査をしていない。治療方針について納得がいっていないなどあれば、ぜひ早めに当院循環器科へご相談ください。※その際に検査データや治療内容がわかるものがあると助かります。
必要に応じて、内科治療や定期的なモニタリング計画をご提案します。