犬の皮膚の痒み:家庭でできるケアのすべて

鶴見区のピア動物医療センターでは皮膚科診療にも力を入れています。なかなか皮膚の痒みがコントロールできない、再発を繰り返すなどでお困りの方はご相談ください。

犬が皮膚をかゆがって掻いたり舐めたりする姿は、多くの飼い主さんにとって心配の種です。痒みの原因にはアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、ノミ・マダニ、細菌や真菌感染などさまざまなものがありますが、治療には動物病院での診断と投薬が不可欠です。
治療の軸は投薬治療ではありますが、家庭でも日常的にできるケアを行うことで犬の痒みを和らげ、皮膚の健康を守ることが可能です。本記事では、最新の獣医皮膚科文献に基づき、犬の痒みに対する家庭でのケア方法を詳しく解説します。


目次

犬の皮膚と痒みの仕組み

皮膚は外界から体を守るバリアであり、同時に免疫システムの一部でもあります。

  • 表皮の角質層には「細胞間脂質(セラミドや脂肪酸など)」が存在し、水分保持と外部刺激の遮断を担っています。
  • アトピーや慢性皮膚炎では、このバリアが壊れやすくなり、アレルゲンや細菌が侵入しやすくなります。
  • その結果、かゆみを感じる神経が刺激され、犬は掻いたり舐めたりしてしまうのです。

家庭でできるケアの基本方針

家庭でのケアの目的は 「皮膚バリアを守り、炎症と痒みを軽減し、二次感染を防ぐ」 ことにあります。以下に具体的な方法を紹介します。

シャンプー療法

  • 低刺激シャンプー(コロイドオートミール、アロエベラ入りなど)には保湿・抗炎症作用があり、痒みを和らげます。
  • 抗菌・抗真菌シャンプー(クロルヘキシジン、ミコナゾール配合)は細菌・マラセチア感染を予防します。
  • 洗いすぎは逆効果なので、週1回程度から始め、獣医師の指示で調整します。

ポイント

  • ぬるま湯を使用(熱いお湯は皮膚を乾燥させます)
  • 泡立てて数分置いてからすすぐ(薬用成分が皮膚に作用するように)
  • シャンプー後は保湿剤スプレーやローションを併用するとさらに効果的

保湿ケア

  • セラミド配合ローション保湿スプレーは皮膚の水分保持とバリア機能改善に役立ちます。
  • 乾燥が強い冬場やエアコン使用時には特に重要です。
  • 痒みを減らすことで犬が掻く回数を減らし、皮膚の悪化を防ぎます。
  • 動物用の製品もありますが、ヒト用でも構いません

どんなシャンプーが適しているのかわからない場合はご相談ください。
当院ではビルバック社のシャンプー剤を取り扱っております。ご興味のある方は製品ホームページをご覧ください。


食事管理

  • オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は抗炎症作用があり、皮膚の赤みや痒みを軽減します。
  • アレルギー性皮膚炎では加水分解タンパク質や除去食による食事療法が有効な場合もあります。
  • おやつや間食も含め、アレルゲンとなる食品を徹底的に避けることが大切です。
  • アレルギー食の効果が出るには2ヶ月程度かかりますので、効果がないからといってすぐにやめないようにしましょう。

外部寄生虫の予防

  • ノミやマダニは強い痒みを引き起こすため、毎月の駆虫薬は必須です。
  • 家の中のカーペットや寝具の洗浄・掃除機がけも並行して行いましょう。

環境整備

  • 室内の 湿度は50%前後を目安に。乾燥すると皮膚がかゆくなりやすいです。
  • ハウスダストや花粉はアレルゲンとなるため、空気清浄機の使用やこまめな掃除が有効です。
  • 散歩後は犬の被毛や足を濡れタオルで拭き、アレルゲンを取り除きます。

心理的サポート

  • 痒みが続くと犬はストレスでさらに舐め壊すことがあります。
  • 散歩や遊びで気を紛らわせることも大切です。
  • 長時間の留守番中はエリザベスカラーや保護ウェアで舐め壊しを防止します。

脂肪酸のサプリメントって効くの?

皮膚科のサプリメントとして脂肪酸を含有するサプリメントが多く発売されています。
「脂肪酸」と聞くと脂っぽいイメージですが、実は皮膚や毛並みにとって欠かせない栄養素です。特に注目されているのが、オメガ3脂肪酸(EPA・DHAなど)とオメガ6脂肪酸(リノール酸など)です。

オメガ6(リノール酸など) … 植物油に多く含まれ、皮膚のバリア機能を整えるのに役立ちます。

オメガ3(EPA・DHA) … サーモンオイルやイワシ油など魚由来。炎症やかゆみを抑える作用が期待できます。

最近の研究ではn-3系多価不飽和脂肪酸(オメガ3、例:ALA、EPA、DHA)の補給が、アトピーやノミアレルギー性皮膚炎に関連した掻痒により強い効果を示すことが明らかとなりました。

どう役立つの?

📌 皮膚のバリアを強くする
リノール酸(オメガ6)は皮膚の「保湿成分」に取り込まれて、水分保持やバリア機能を改善。乾燥肌やフケ対策に効果的です。

📌 炎症とかゆみを和らげる
魚油に含まれるEPA・DHA(オメガ3)は、体の中で「炎症を起こしにくい物質」に変わります。結果として、かゆみや赤みを抑える助けになります。

📌 毛並みがツヤツヤに
脂肪酸を補うと、毛がパサつかずに艶やかになった、フケが減った、という報告も多くあります。

犬におすすめの量は?

研究では、体重10kgの犬で1日あたりEPA+DHAを合計700mg前後が目安とされています。
ただし体格や病気の状態によって必要量は変わるため、必ずかかりつけの獣医師に相談してから始めましょう。

サプリの効果が出るまでには 4週間以上 かかります。およそ8週でしっかりとした改善が見られることが多いです。すぐに結果が出なくても、コツコツ続けることが大切です。

製品を選ぶときの注意点

  • 品質管理のしっかりした製品を選ぶ(酸化した油は逆効果!)
  • ビタミンAやDが過剰に入っている製品には注意(肝油など)
  • ごはんと一緒に与えると吸収が良く、お腹も壊しにくい

病院ではサプリメントとしてアンチノールを取り扱っておりますが、中型犬以上では投与量が多く非常に高額となります。当院ではヒト用医薬品であるEPA/DHA製剤を取り扱っておりますので大型犬でも1日あたり200円程度で高品質なオメガ3脂肪酸を摂取することができます。また医薬品であることから保険も適応されますので入られている方はよりおすすめです。

病院を受診すべきサイン

家庭でのケアを行っても以下のような場合は、早めに動物病院を受診してください。

  • 掻き壊して出血や膿が出ている
  • シャンプーや保湿をしても痒みが改善しない
  • 脱毛や皮膚の色素沈着が広がっている
  • 全身性の皮膚炎や外耳炎を繰り返す

まとめ

犬の皮膚の痒みは、飼い主さんによる毎日のケアで大きく軽減できます。

  • シャンプーと保湿で皮膚バリアを守る
  • 食事とサプリメントで体の中からサポート
  • 寄生虫予防と環境整備でアレルゲンを減らす
  • 必要に応じて病院で薬物療法を併用する

痒みのケアは「家庭+病院」の二本柱で進めることが大切です。日常的にできることを積み重ね、犬が快適に過ごせる皮膚環境を整えてあげましょう。

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