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【関東初の死亡例】犬猫もかかるマダニ感染症「SFTS」とは?症状・予防・飼い主の注意点まとめ
2025年6月、茨城県内で初めてSFTS(重症熱性血小板減少症候群)による死亡例が確認されました[NHK水戸]。この病気はこれまで西日本で多く確認されていましたが、いよいよ関東地方にも感染が拡大してきていることが示された、重大な出来事です。
さらに動物から人への感染も報告されており、2025年5月三重県の動物病院では、感染した猫を治療した獣医師が死亡しています。直接その猫に噛まれたわけではないのにです。これは一緒に暮らす飼い主様にも重大なリスクとなります。
SFTSは人間だけでなく、犬や猫も感染・発症し、命を落とすこともあるマダニ媒介感染症です。今回は、飼い主の皆様に向けて、SFTSの症状・予防・日常でできる対策をわかりやすくまとめました。
SFTSとはどんな病気?
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、SFTSウイルス(Bandavirus dabieense)による感染症で、マダニに刺されることでヒトや動物にうつります。2011年に中国で初めて報告され、日本では2013年からヒトの発症が確認されています。
このウイルスは、ウイルス粒子の外側にエンベロープ(膜)を持つRNAウイルスで、消毒薬での失活が可能な一方、感染力は非常に高く、体液などを介した接触でも感染する恐れがあります。
犬や猫も感染する!SFTSの恐ろしさ
感染経路
犬猫も、マダニの吸血を通じてSFTSウイルスに感染します。また、SFTSを発症した犬猫の体液や排泄物、唾液などから、飼い主や動物病院スタッフへうつる事例も報告されています。
症状と致死率
猫の場合
- 元気消失・食欲不振(100%)
- 高熱(39℃以上):78%
- 黄疸:95%
- 嘔吐・下痢などの消化器症状:約60%
- 血液検査異常(白血球・血小板の減少、肝酵素上昇)
- 致死率:約60%
犬の場合
- 同様の症状が出ますが、猫に比べると比較的軽症であることが多いものの、
- 致死率:約40%と無視できないリスクです。
なぜ今SFTSが関東で問題になるのか?
これまでは、SFTSの発生は西日本に限られるとされていました。しかし最近では、
- 東日本の野生動物での抗体保有が確認された
- 2025年6月、茨城県で初のヒト死亡例が報告された
つまり、関東地方も既にウイルスのリスクが存在するエリアとなってきているのです。
特に、野良猫や保護動物の搬送、屋外で遊ぶペットの増加により、感染動物が動物病院や家庭に入り込むリスクも高まっていると考えられます。
飼い主ができる予防と対策
1. マダニ予防薬をきちんと使用する
- これが一番大事です。予防に勝る治療なし。
- 外に出る猫ちゃんも絶対に予防してください。
- 月1回のスポットタイプや内服薬を年間通して使用してください。
- 市販品ではなく、動物病院で処方される医薬品が推奨されます。
2. 外出後は必ずチェック
- 散歩や外出から帰ったら、マダニが付着していないか全身チェックしましょう。
- マダニは耳の後ろ、首の後ろ、足の付け根などに好んでつきます。
3. 不調があればすぐ受診
- 元気がない、熱っぽい、食欲がないなどの症状があれば早めに動物病院へ。
- 特に夏〜秋は要注意です。
4. 感染疑いの動物には直接触れない
- 嘔吐や黄疸など異常がある場合、安易に口や顔を近づけたり、素手で触れないようにしてください。
- 動物病院に相談しましょう。

SFTSが疑われる場合の動物病院での対応
動物病院では、検温・血液検査・入院管理などを通じてSFTSを疑います。確定診断は、国の研究機関への検体送付(血清・スワブ等)により行われます。
また、SFTSが疑われる動物は、陰性確認が出るまで入院下で隔離されることが基本方針です。
治療法はあるの?
残念ながら、SFTSに対して有効な特効薬は現時点ではありません。治療は以下のような対症療法に限られます。
- 点滴による脱水補正
- 制吐剤や抗けいれん薬の投与
- 抗生剤による二次感染の予防 など
家庭で気をつけること
もし獣医師から「SFTSの可能性がある」と言われたら、飼い主自身の体調にも注意が必要です。
- 2週間程度、毎日体温を測定
- 発熱(38℃以上)、倦怠感、嘔吐、下痢などがあれば、病院に連絡し、SFTS疑い動物との接触歴を必ず伝えてください
また、死亡した動物を扱う際は、
- 体液が漏れないように吸水シートとビニール袋で3重包装
- 火葬を推奨(感染性を伝えること)
最後に:命を守るのは日頃の意識と予防から
SFTSは、まだ知らない方も多い病気かもしれません。しかし、西日本に限られた感染症ではなくなりつつあり、関東に住む飼い主も無関係ではいられない現実があります。
「うちの子は外に出ないから大丈夫」と思っていても、屋内にも入り込むマダニや、感染動物との接触が起こりうることを考慮する必要があります。
大切な家族である犬や猫、そしてご自身を守るために、今日からできる対策を始めましょう。
ピア動物医療センターのご案内
当院では、マダニ感染症(SFTS)を含む感染症対策に力を入れており、予防・駆虫・症状の早期発見に対応した診療を行っています。
「マダニがついていたけど大丈夫!?」「予防はどうしたらいいの?」と感じたら、お気軽にご相談ください。
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